2011 年 65 巻 1 号 p. 400-405
凍害環境下において、セメント硬化体の凍結防止剤成分の浸透に伴う化学的変質に着目した定量的な検討事例は稀少であり、上記の化学的な影響が凍害に及ぼす影響は不明確である。本論文では、凍結防止剤成分の浸透に伴うセメント硬化体中の水和生成相の変化が凍結防止剤の浸透および凍害の進行に伴う引張特性に及ぼす影響について検討した。その結果、凍結融解作用下における凍結防止剤および塩化物イオンの浸透による1)ひずみ履歴および融解時の残留ひずみの増加、2)モノサルフェート水和物の転移および分解、エトリンガイト生成に伴う凍害の促進、および3)引張強度、弾性係数等の力学特性値や破壊エネルギーの低下を確認した。