1961 年 5 巻 2 号 p. 81-91
土じょうの成熟の観点から,また土じょうタイプの指標動物として注目すべき腐植食性のササラダニ類(Oribatei)が,植生のみを異にする土じょう中においてどのように分布を異にするかをみるために,東京都下北多摩郡国立町において,相隣接したクヌギ林とアカマツ林を選んで1959年4月より1年間調査を行なった。その結果,クヌギ林より2165頭(30種),アカマツ林より1709頭(21種)のササラダニを得た。アカマツ林においては,見いだされた種類のほとんどがクヌギ林との共通種であるのに比べ,クヌギ林においては多くの固有な種を有していた。また優勢種および恆常種の観点から,各林の主体となる種類を検討した場合にも違いが見られた。概してクヌギ林のほうがアカマツ林よりもササラダニ相が量的にも質的にも豊富であり,このことは腐植の量的・質的な差,更にあわせて調査して判明した土じょうの容重,団粒構造などの物理的性質の違いによって説明される可能性が濃い。季節的な変化をみた場合には,両林ともに春および冬はある水準を維持し,夏に減少し秋に増加することがわかった。特に秋期の増加はクヌギ林において激しく,年間におけるダニ総量がアカマツ林よりも多いのも,これに起因すると思われる。