1986 年 30 巻 2 号 p. 99-105
カイコおよびアメリカシロヒトリの終齢幼虫の体内におけるBacillus thuringiensisの消長を調べた。幼虫がB. thuringiensisを摂食したのちも生存する場合には体内におけるB. thuringiensisの増殖は見られず,糞とともに急速に排泄された。一方,B. thuringiensisを摂食して斃死した幼虫の体内では発芽したB. thuringiensisは15∼66倍に増殖して,芽胞を再形成した。しかし腸内細菌の密度の高い晩秋蚕期のカイコあるいは第3世代のアメリカシロヒトリの斃死体内ではB. thuringiensisの発芽後の増殖および芽胞の再形成が抑制されると考えられる結果が得られた。自然環境において昆虫の斃死体はB. thuringiensisの増殖の場となりうるが,そのためには競合微生物の少ないことが不可欠と考えられる。