2012 年 69 巻 1 号 p. 11-19
RGDS ペプチドは,細胞接着性ペプチドとして広く知られている.本報では,分子内に細胞接着性ペプチド RGDS を複数組み込んだペプチドや,水溶性高分子との複合体を分子設計した内容について述べる.これらペプチドの活性を細胞接着阻害実験で評価したところ,RGDS を繰返し縮合した poly(RGDS)が高い細胞接着活性を示した.また,CD スペクトルを測定したところ,RGDS の繰返し単位が長くなるにつれて α-ヘリックス構造を構築していた.そこで,RGDS および(RGDS)n の水溶液系における動的挙動について分子動力学計算を試みた.分子動力学計算により決定した構造解析結果と,CD スペクトル結果より考察した実験的コンホメーション解析を比較検討したところ,理論的構造解析結果と実験的構造解析結果がよく一致していた.さらに,ペプチドの構造と細胞接着性試験の結果の相関性についても議論を加えた.