マイクロ波を利用した電子レンジは,家庭内やコンビニエンスストアにおける食品の効率加熱器機として広く普及している.一方,1986 年以降化学反応においても効率的加熱方法としてマイクロ波は活用されている.しかし糖鎖合成や糖ペプチド合成など“デリケート”な多官能基性化合物の合成過程では,一般にその反応温度を下げることが多いこともあり,マイクロ波が活用されることは稀であった.このような背景にもかかわらず筆者らは,「メチルグリコシド体を糖供与体とする新規グリコシル化反応の開発」,「低温下でのオリゴ糖効率合成」,「糖ペプチド体の効率合成とこれらのフォーカストライブラリ調製」などの研究を進め,これらの研究を通じて,マイクロ波が効率加熱効果による化学反応の促進効果を持つだけでなく,加熱効果以外の効果も有することを示唆する結果を得た.