p-ヒドロキシ安息香酸 (HBA), 2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸 (HNA) 共重合体を溶融し液晶状態から紡糸した繊維の結晶構造の熱処理変化について, 子午線方向のX線回折強度分布の実測値と理論計算との比較から考察を行った. 原糸には子午線方向に回折角2θ=13.1°, 29.0°, 43.4°の非周期的な位置に三つの回折が現れる. これらの回折はHBA, HNAのランダムシーケンス鎖に帰属される. これに対し熱処理後には回折角2θ=13.1°の回折が大きくなり, また回折角2θ=29.0°の回折の低角側にシヨルダーの回折が現れる. 有限マルコフ連鎖を仮定して回折強度分布の計算を行ったところ, 実測の熱処理変化を再現することができた. 子午線反射で確認された熱処理変化は, ランダム鎖中のある確率で存在する比較的にブロック的なシーケンスの部分の結晶性の増大によってブロック的なシーケンスが顕在化する結果であると考えられた.