日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science)
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猫の呼吸器疾患より分離した細胞変性ウイルスに関する研究 I.
神薗 稔小西 信一郎尾形 学小堀 進
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1968 年 30 巻 4 号 p. 197-206_1

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抄録

1958年米国で,CI′andcllらによって猫鼻気管炎ウイルスが分離された。それ以来,猫腎皮質培養細胞を用いて,猫の呼吸器病ウイルスやOrphanウイルスなどの分離が,諸外国で報告されている。しかしわが国では,これらのウイルスの分離に関する報告は,全くないまま今日に至っている。著者らは,1963年春に子猫の呼吸器疾患の続発を認めた。そして眼・鼻より水様ないし膿様の分泌物を排して,斃死し,または安楽死させた猫18頭で,結膜・鼻腔・気管・糞便などの綿棒材料より,猫腎皮質培養細胞を用いて,ウイルスの分離を試みた.その結果,12頭(66.7%)より27株(46.6%)のウイルスが得られた.その大部分は結膜および上部気道より,また少数は肺および糞便から,分離されたものである.これらのウイルスを接種した猫腎培養細胞では,CPEは接種後24時間内に出現し,細胞は円形化するが,核内封入体は見られず,比較的大きなブラックを形成する.ウイルス価は105・25~107・5TC工D50/0.2mlである.全株とも,エーテル耐性で,ニワトリ赤血球凝集性は陰性であった.血清学的には,補体結合反応で分離株相互間に交叉がみられたが,中和試験では少なくとも2型に分類された.さらに,猫に対する病原性は,無症状に経過するものもあったが, 5~10日目ごろより眼分泌物排出・呼吸器症状などを呈し,のち治癒するもの,あるいはそのまま斃死するものなどがあった.そして接種猫のほとんどすべてから,ウイルスが回収された.したがってわが国にも,少なくと・も2つ以上の血清型に属するウイルスによる猫のウイルス性呼吸器病が存在することが明らかになった.

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