日本薬理学雑誌
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Cadralazineの中枢神経に対する作用
西森 司雄森野 久弥土山 道夫池田 博信長谷川 薫東尾 尚宏秋田 晶平山内 敏彦中尾 健三犬飼 利也
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1988 年 91 巻 4 号 p. 209-220

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抄録

cadralazineの中枢神経系に対する作用について検討を加えた.cadralazineはマウスにおいて,0.5mg/kg,p.o.より自発運動量の抑制.最大電撃けいれんの増強作用を示した.ラットでも本薬は0.5mg/kg,p.o.以上で尾または耳介の発赤,5mg/kg,p.o.以上で自発運動の低下および呼吸の深大化をもたらした.cadralazine 2.5mg/kg,p.o.はマウスにおいてthiopental-Naの睡眠時間の延長,methamphetamineの運動亢進の抑制および酢酸writhingの抑制を示した.なお,酢酸writhingの抑制作用はnaloxoneの前処置により拮抗されなかった.本薬は5mg/kg,p.o.でラットの体温下降,マウスのtremorine拮抗作用を示した.本薬は,25mg/kg,p.o.の高用量でマウスのreserpineの誘発による眼瞼下垂を増強した.ラット条件回避反応およびネコ脊髄反射に対しては,cadralazine 100mg/kg,p.o.の高用量でも未処置群との間に統計学的な有意差は認められなかった.慢性電極植込みウサギ脳波に対して,cadralazine 1または5mg/kg,i.v.は自発脳波および中脳網様体の高頻度電気刺激による脳波覚醒反応の閾値に対して著明な影響を及ぼさなかった.cadralazine 100mg/kg,p.o.は高用量でもtail pinch法を用いたマウスの鎮痛作用および傾斜板法および懸垂法を用いたマウスの筋弛緩作用に対し著明な影響を及ぼさなかった.以上まとめると,cadralazineにより種々の作用が認められたが,これらの作用は定性的にhydralazineとほぼ類似していた.本薬が中枢移行の極めて少ないことを考慮すると,本薬の薬効である血管拡張作用に由来する血圧下降によるものと考えられる.

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