日本薬理学雑誌
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簡便なマウス自発運動測定方法
平林 牧三飯塚 正博田所 作太郎
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1978 年 74 巻 5 号 p. 629-639

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抄録

小動物の自発運動活性に対する薬物効果は,行動薬理学における基本的情報の一つと考えられ,多数の測定装置が開発されてきたが,それぞれ一長一短がある.そのため観察目的に合致した測定方法を選ぷことが必要である.われわれは多数例の実験結果から,正確かつ能率的に薬物の急性効果を把握することを目的として,安価,堅牢,簡便かつ清潔なマウス用自発運動測定装置を考案自作し,応用例として,d-amphetamine(1.25~5mg/kg),methamphctamine(1~4mg/kg),cocaine(10~40mg/kg)およびmorphine(5~20mg/kg)投与時の急性効果を検討した.さらに代表的な装置としてAnimexを選び,本器によって得られた成績とも比較し,自作装置の正確性,機能上の特徴,あるいは応用範囲等につき考察した.本装置の製作は簡単なため多数のセットによる多数例の同時実験が可能である.装置の本体は直径25cm正円形底面を持つ市販のプラスチック製洗面器二個を重ね合わせ,内側容器をactivity cageとし,中心に3cmの釘で支柱を作り,外側容器の中心に接着した金属性の穴にゆるやかにはめこんだものである.マウスの位置移動に従って生じた容器のわずかな傾斜が,外側容器辺縁に等間隔に固定した3個のマイクロスイッチを次々に押しこれによって電磁カウンターが作動することを原理としている.使用薬物はすべて著明な自発運動促進をひきおこし,その程度と効果持続は用量依存的であった.投与経路の差(s.c. or i.p.)により,cocaine投与例には著明な自発運動促進パターンの相違が認められた.本測定方法による自発運動活性の変化は,Animexによるそれより正確に各薬物の特徴をあらわしていると考えられた.しかし自発運動抑制をひきおこす薬物の検討には必ずしも適切ではなかった.しかし本方法は多数の利点と有用性を持っており急性効果の検討あるいは学生実習等,応用範囲は広いと思う.

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