2013 年 141 巻 5 号 p. 268-274
日本の製薬産業は一定の競争力は有しているものの,特許切れ等の影響もあり技術貿易収支も2007年をピークに減少傾向にあるなど,総合的にみて国際競争力が低下傾向にある.その大きな原因はオープン・イノベーションへの取り組みが後れたことにあると筆者はみている.最近は日本の製薬企業でもオープン・イノベーションに舵を切る企業も増え,大学も技術移転体制を整備するなど個々に努力がなされてはきているが,オープン・イノベーションを推進するうえで製薬企業,大学,バイオベンチャー,ビジネスマッチングの社会基盤の面でそれぞれ課題を抱えており,先行する欧米に比べ大きく後れている.本稿では日本におけるオープン・イノベーションの進展状況をレビューするとともに,これらの課題についての対応策について検討している.特にビジネスマッチングの重要度が高まっており,その活用方法等について解説を試みている.