日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
新規HMG-CoA還元酵素阻害薬ピタバスタチン(リバロ錠®)の薬理および薬物動態的特徴と臨床効果
山崎 裕之藤野 秀樹金澤 瑞穂玉木 太郎佐藤 文泰鈴木 幹夫北原 真樹
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2004 年 123 巻 5 号 p. 349-362

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抄録

近年3-Hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A(HMG-CoA)還元酵素阻害薬(スタチン)は高コレステロール血症の治療薬としては最も頻用されている.ピタバスタチンカルシウムは従来よりも有効性に優れるスタチンを目指して,探索研究から臨床まで国内で開発された新規のスタチンである.薬物動態試験から,ピタバスタチンは肝臓に選択的に分布し,胆汁中に排泄された後効率よく腸肝循環し,長い血中半減期を示した.ピタバスタチンはモルモット肝臓でLDL受容体活性を促進し,肝灌流系でVLDL分泌低下作用を示した.また,0.3 mg/kg以上で血中コレステロール(TC)濃度の低下,1.0 mg/kg以上でトリグリセリド(TG)濃度の低下を示した.以上からピタバスタチンはLDL受容体の発現促進によりLDLコレステロール(LDL-C)濃度を低下させ,また,VLDL分泌低下作用によりTG濃度を低下させるとともに,LDL-Cの低下を増強すると推察された.14C-ピタバスタチンはin vitroのヒト肝ミクロソーム系では主にCYP2C9により8位水酸化体に代謝されるが,その水酸化反応のVmax/Kmは約2 µl/min/mgと他のスタチンの報告値の約1/8~1/100であり,代謝を受けにくいことが示された.また,他のヒトP450分子種の代謝反応に対する阻害作用は認められなかった.これから,ピタバスタチンはP450の関わる薬物相互作用は起こしにくいものと考えられた.臨床試験成績862例の集計で,ピタバスタチンの血中TC低下率は28%,LDL-C低下率は40%を示した.副作用の程度および種類は既存のスタチンと同程度であり,重篤な副作用はなかった.ピタバスタチンは優れた脂質改善作用を有し,CYPの関与する薬物相互作用を起こしにくいスタチンとして,高コレステロール血症の治療に十分貢献できるものと期待される.

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