日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
薬物標的としてのアミノ酸トランスポーター分子
遠藤 仁金井 好克
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 114 巻 supplement 号 p. 11-16

詳細
抄録

アミノ酸、特に必須アミノ酸は全生物において栄養素として不可欠である。従ってこれらは細胞外から細胞内に取り込まれる必要がある。多くのアミノ酸は水溶性が高いので、脂質二重層膜を通り難く、経細胞膜輸送には特別な輸送膜タンパク質(トランスポーターと呼ばれる)が必要である。他方、アミノ酸はタンパク質の原料であるので、増殖の盛んな細胞程その需要が高まる。演者らはleucineを代表基質とするシステムLアミノ酸トランスポーター分子をコードする遺伝子をグリオーマ細胞よりクローニングし、これをLAT1(L-type amino acid transporter 1)と名付けた。LAT1は各種癌細胞に発現が高く、正常細胞にも骨髄や小腸上皮、脳など、限られた部位にも発現が認められた。さらにLAT1のホモログとして正常細胞に広く分布するLAT2を見出すことができた。LAT1を強く阻害し、LAT2には影響しない化合物が抗悪性腫瘍薬の候補になり得るか否かをLATに対して比較的選択性のある阻害物質(2-aminobicyclo-2(2,2,1)-heptane-2-carboxylic acid)をin vitroとin vivoの系で検索した。その結果、in vitroではヒト悪性腫瘍由来細胞の増殖を強く抑制し、in vivoでは担癌動物の延命効果も認められた。更にLAT1により認識される側鎖に抗腫瘍薬物を結合させて、LAT1発現腫瘍細胞への薬物の送達も可能と考えられる。従ってLAT1様のトランスポーターは薬物の標的となり得るものとの結論に達した。

著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top