日本薬理学雑誌
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新規経口吸着剤キトサン被覆酸化セルロースの薬理学的特性(第1報)正常ラットに対する作用
吉本 宏永野 伸郎西鳥羽 剛佐藤 広三宮田 そのえ日下 多景 世兵山口 達明
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1995 年 106 巻 2 号 p. 113-122

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抄録

現在,慢性腎不全およびそれに伴う諸症状の治療には,透析療法の他,降圧剤,利尿剤等の薬物療法や食事療法が行なわれているが,より有効に腎不全の進行を遅らせ,尿毒症症状を改善し,透析導入期を遷延化させる薬物の開発が期待されている.我々は,慢性腎不全状態下で生体内に蓄積した尿素,アンモニア等の尿毒症物質を消化管内で吸着し,糞便中に排泄させることにより腎不全の進行を抑制する目的で,セルロースにアルデヒド基を導入し(酸化セルロースlDAC),さらに表面アルデヒド基を天然高分子であるキトサンで処理したキトサン被覆酸化セルロース(キトサンDAC)を経口吸着剤として新たに開発した.今回,キトサンDACのin vitroにおける吸着能を既に保存期慢性腎不全患者に使用されている活性炭経口吸着剤(クレメジン)と比較したところ,クレメジンには認められない尿素およびアンモニアに対する高い吸着能が認められた.また,糞,尿および血液に対する作用を検討する目的で,キトサンDACを1,2,3,4,5,7,10%の割合で正常粉末食と混合し,制限給餌下で正常ラットに混餌投与した.3週間後に代謝ケージを用いて24時間糞および24時間尿を採取後,全採血を施し分析に供した.その結果,キトサンDACの混餌投与により,糞量の増加,糞水分含量の増加,糞中窒素排泄量の増加,糞中電解質排泄量の増加,タンパク質の見掛けの消化吸収率の低下,血中尿素窒素値の低下および血清カリウム値の低下傾向が低用量より用量依存的に認められ,代償的な尿中尿素排泄量の低下および尿中ナトリウム排泄量の低下が観察された.以上の結果は,キトサンDACは慢性腎不全に伴う尿素を主体とした尿毒症物質の貯留,浮腫,腎性高血圧,高カリウム血症等に有用な作用を有する可能性を示唆するものであり,今後の腎不全モデル動物を用いた評価が期待された.

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