日本薬理学雑誌
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麦角アルカロイド誘導体テルグリドの中枢神経系への影響 : 生化学的及び行動薬理学的検討
生駒 幸弘赤井 哲夫仲田 行恵原 公生Helmut WACHTEL山口 基徳
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1993 年 102 巻 2 号 p. 113-129

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抄録

麦角アルカロイド誘導体テルグリド (terguride) の中枢神経系への影響を, マウス, ラット, モルモットを用いて生化学的及び行動薬理学的に構造類似薬リスリド (lisuride) と比較検討した.テルグリドはリスリドと同様, ラット脳細胞膜分画のドパミンD2受容体 (Ki=3.5nM), セロトニン5-HT1A (Ki=1.8nM) 及び5-HT2受容体 (Ki=5.5nM), アドレナリンα1 (Ki=11nM) 及びα2受容体 (Ki=0.4nM) に高い親和性で結合した.中枢ドパミン神経系シナプス前D2受容体に対し, テルグリドはリスリド同様に作動薬として働き, 低用量からラットに自発運動の軽度抑制やあくび行動を引き起こした.シナプス後D2受容体に対しては, テルグリドは作動薬リスリドと異なり部分作動薬として働くため, 単独作用は弱く, ラット及びモルモットに自発運動充進や常同行動を誘発しなかった.逆に作動薬アポモルフィン誘発自発運動充進及び常同行動, 遮断薬ハロペリドール誘発力タレプシーを抑制した.一側黒質破壊により線条体ドパミン神経系が超過敏化したラットでは, テルグリドはリスリドと同様に破壊側への旋回行動を引き起こした.テルグリドはリスリドと異なりラットにセロトニン症候を誘発せず, 5-HT, A作動薬8-OH-DPATで弁別訓練したラットで般化作用を示さなかった.また, 5-HT2作動薬で誘発されるマウスの首振り運動を誘発しなかった.テルグリドは高用量で, マウスのノルアドレナリン致死やクロニジン誘発体温下降に拮抗した.ラットにテルグリド (1mg/kg) を4週間反復皮下投与しても, その自発運動量抑制及びあくび行動誘発作用に変化が見られなかった.以上の成績より, テルグリドは主として中枢ドパミン神経系に作用し, シナプス前D2受容体に対してはリスリド同様に作動薬として, シナプス後D2受容体に対しては作動薬リスリドとは異なり部分作動薬として働き, 種々の薬理作用を発揮するものと推察された.

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