1992 年 100 巻 1 号 p. 67-76
分子量約60万~120万のヒアルロン酸ナトリウム(HA)が変形性関節症(OA)に有効であることが報告されているが,さらに分子量の高いHAの方が有効性も高いと考えられるため,新規に発酵法で得られた分子量約180万~210万のHA(SL-1010)の効果をウサギ膝関節内へのパパイン注入により発症したOAモデルを用い検討した.ウサギ膝関節内に3日間隔で2回0.4,0.8および1.6%パパイン溶液0.5mlを注入した場合,用量に依存して軟骨基質の変性,軟骨中の硫酸化グリコサミノグリカン(S-GAG)量の減少が認められ,滑膜の炎症が軽微であるOAモデルが得られた.SL-1010投与群では,このモデルにおける軟骨基質の変性および軟骨細胞数の減少の程度は生理食塩液を投与した対照群および平均分子量約95万のHA(HA-95)投与群に比べやや軽度であった.また,SL-1010投与群ではOAモデルにおいて低下した軟骨中のS-GAG量が対照群と比較し,有意に回復した.さらにSL-1010はウサギの正常関節およびOAモデル関節から採取した軟骨からの35S-GAGの遊離を抑制する傾向を示した.以上の成績より,SL-1010はウサギを用いたパパイン注入によるOAモデルにおける軟骨変性の抑制に有効であることが示唆された.この作用は,S-GAG遊離を抑制することにより,低下した軟骨中のS-GAG量を回復することが大きく関与しているものと考えられる.