2006 年 32 巻 1 号 p. 66-71
ポリアクリルアミド(PAA)ゲル担持膜の分子透過性を無次元分子径(ゲル細孔径に対する分子径の比)の関数として測定した.ゲル担持膜の調製は,はじめにセルローズ・ナイトレート膜をアクリルアミドモノマー(AA),架橋剤および重合開始剤を含む水溶液中に浸し,その後液から取り出した膜に紫外線を照射することによって行った.ゲル担持膜の分子透過性を4種のタンパク質溶液を用いて検討した.さらに,この膜を分離膜として使用し,タンパク質および酵素溶液の回分濃縮への適用を試みた.その結果,以下のことが明らかになった.(1)PAAゲル担持膜のゲル細孔は通過する分子と細孔径の比によってタンパク質分子を阻止している.(2)ゲルを調製するときのAA濃度によって平均有効細孔径は変化し,その機構は粒子充填体モデルによって説明できる.(3)AA濃度が50 kg/m3のときゲルの平均有効細孔径は最小値(6.6 nm)を示す.(4)ゲル担持膜によるタンパク質と酵素の回分濃縮過程は,分子の膜透過率が無次元分子径のみの関数であるとの仮定に基づいて導いた理論式によく適合する.