1988 年 108 巻 12 号 p. 1168-1178
前報ではAdiantum属植物の中のseries Caudata植物の内部形態とその関連生薬の基源について報告した. 本報ではseries Pedata CHING及びFlabellulata CHINGに属する植物の内部形態及びその関連生薬の基源について報告する. アジア地区にはseries Pedataの植物は2種, Flabellulataの植物は5種が分布し, そのうち前者のAdiantum pedatum L. とA. myriosorum BAK. 及び後者のA. flabellulatum L. が中国やインドにおいて薬用に供されるといわれている. またA. pedatumは欧米諸国でも去痰, 抗リューマチ, 肺疾患の治療薬などとして用いられている.
Series Pedataの植物は葉が1回叉状に分岐し, 羽片は対称する2本の分枝の上側にのみつき, 小葉は非対称形をなす. 一方, series Flabellulataの植物は葉が掌状又は羽状に (1-) 2-3回叉状分岐し, 小葉は扇形, 類円形又は非対称形を呈す.
今回, 中国及びその周辺に分布する上述の3種を含むseries PedataとFlabellulataの植物計6種を比較組織学的に検討し, 入手しえた関連生薬の基源を明らかにしたので報告する.