1999 年 1999 巻 10 号 p. 685-690
対イオンの異なるNafion膜の水蒸気透過性への膜中の水の状態の影響を検討した.対イオンとして2種のアルカリ金属イオン(Na+とK+)と2種のアミノ糖(α-D-グルコビラノシル-(1→6)-2-アミノ-2-デオキシ-α-D-マンニトールとD-グルシトールの等量混合物(GPA)とD-グルコサミンを用いた.膜中の不凍水の含有量と運動性は,2状態モデルに基づいて,示差走査熱量測定と170-NMR測定により決定した.これらの膜の水蒸気透過性は,膜の水の溶解度に依存し,一方,水蒸気拡散性は,膜の水の取り込みよりはむしろ不凍水の運動性に依存した.対イオンにGPAを用いたNafion膜の水の拡散性は,本研究に用いた膜の中で最も低くなつた.これは,他の膜に比べこの膜に取り込まれた水に占める不凍水の割合は高く,不凍水の運動姓は低くなったためである.Nafion膜において,アミノ糖は,そのかさ高い構造により,膜への凍結水の取り込みを抑制し,アミノ塘のヒドロキシ基の局所的な凝集により,他の対イオンと比較して,アミノ糖の周囲の不凍水の運動性は低くなった.
この記事は最新の被引用情報を取得できません。