本研究の主目的は, 自由記述法と描画法を評価ツールとして併用し, 「昆虫の体のつくり」の学習前の小学校第2学年児童と, 学習後の第3学年児童の認識状態を評価することにある。得られた知見は, 以下の4点である。1)「昆虫の体のつくり」について, 命題A(昆虫の体は, あたま・むね・はらの3つの部分に分かれていること)及び命題B(昆虫のむねには, 6本のあしがあること)に依拠した科学的な説明ABを行えた小学校第2学年児童は皆無であり, 第3学年児童においても約30%にとどまっていること, 2)小学校第2学年の場合, 昆虫概念の内包と外延に対するいずれの認識も乏しいため, 特定の昆虫や生き物を事例にして非科学的説明を行った児童が約95%にも及んだこと, 3)小学校第3学年の場合, 命題Aのみに依拠した科学的な説明Aが約40%存在する一方, 命題Bのみに依拠した科学的な説明Bはわずかに約1%のみであったこと, 及び4)両学年のうち, 数%の児童が人の体のつくりとの比較・照合を通して説明していた。得られた評価結果に基づき, 我が国の現行の「昆虫の体のつくり」の学習指導を再構成するための視点を提案した。