日本森林学会大会発表データベース
第130回日本森林学会大会
セッションID: P1-089
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学術講演集原稿
森林限界の樹木4種における細根水吸収・輸送の解明
*矢原 ひかり東 若菜鎌倉 真依牧田 直樹
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抄録

山岳域における樹木の生存境界である森林限界は,低温,乾燥および冬季の土壌凍結などにより樹木にとって水利用が厳しい環境である.本研究では,森林限界に生育する樹木の細根系の水吸収・輸送と炭素利用様式を解明するため,乗鞍岳の森林限界である標高2,500mに優占する樹木4種(落葉広葉樹のナナカマド,ダケカンバ,および常緑針葉樹のオオシラビソ,ハイマツ)の細根系の根透水性,日中の水ポテンシャル,呼吸および形態特性を評価した.4樹種の根透水性の値の範囲は1.20~3.34×10-6 m s-1 MPa-1で有意な種間差がみられ,ハイマツが最も高く,次いでナナカマドおよびダケカンバで,オオシラビソが最も低かった.4樹種の日中の水ポテンシャル値の範囲は-0.20~-0.12 MPaであり,種間差はみられなかったが,水ポテンシャルの最小値はハイマツの根で最も低かった.ハイマツの根は,P-V曲線法による予備的な調査結果から浸透調節能が高いことも示唆されており,日中水ポテンシャルを下げることで積極的に吸水を行っている可能性が考えられた.本発表では,呼吸および形態と根水分性の関係性も踏まえて考察する.

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© 2019 日本森林学会
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