日本がん看護学会誌
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研究報告
外来・短期入院を中心としたがん医療の現状と課題
―外来・短期入院を中心としたがん医療に携わる看護婦の困難と対処―
酒井 禎子小松 浩子林 直子射場 典子外崎 明子南川 雅子片桐 和子池谷 桂子高見沢 恵美子
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2001 年 15 巻 2 号 p. 75-81

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抄録

要 旨

本研究の目的は,「がんデイケアモデル」を考案し,それを臨床適用して,モデルの妥当性,実用性を検証するための第一段階として,①外来通院あるいは短期入院を中心としたがん治療に携わっている看護婦が,がん患者への援助を行う中でどのような困難を感じているか,②また,それらの困難に対してどのような対処を行っているかを明らかにすることである.全国5ヵ所のがん専門病院で外来・デイケアあるいは病棟に勤務し,外来・短期入院を中心とした化学療法や放射線療法を行う患者のケアに直接関わっている看護婦20名に半構成的なインタビューガイドを用いて面接調査を行った.

外来・短期入院を中心とした治療を受けるがん患者へのケアを行う上での困難は,【患者ケアの質を高める上での困難】【ケア提供者間の協働における困難】【看護ケア提供システム上の困難】【患者ケアに携わる上での心理的負担】の4つの項目に分類された.また,これらの困難に対して行われている対処は,【可能な限りの工夫・努力】【知識を深める】【患者を把握し,コミュニケーションを図る】【患者・家族のセルフケアを高める】【情報を共有し,他職種・他部門との連携を図る】【個人の認知的とりくみ】の6つの項目に分類された.

看護婦は,治療を受けながら生活するがん患者のQOLの向上に向けた援助の重要性を認識しながらも,ベッドの数や人的資源といった物理的制約と精神的にも余裕のない状況の中で,各々がさまざまな工夫をしながら業務をこなさざるをえない現状が明らかになった.今後は,患者が相談しやすい窓口の明確化と患者とのコミュニケーションを維持する工夫,かつより効率的に情報を共有できるようなシステムづくりや,他の医療職とそれぞれの専門性を活かした連携を行えるよう,話し合いの場や記録の共有などのシステムを確立することが課題として示唆された.

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2001 一般社団法人 日本がん看護学会
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