日本歯科保存学雑誌
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原著
光ファイバー微小pHセンサー,ISFET微小pHセンサーおよびDIAGNOdent penを用いた抜去う蝕歯のう蝕活動性評価
栗林 恵美北迫 勇一サダル アリレザ田上 順次
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2013 年 56 巻 1 号 p. 55-62

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抄録

目的:光ファイバー微小pHセンサー,ISFET (Ion-Sensitive Field Effect Transistor)微小pHセンサーおよびDIAGNOdent penを用いて,抜去う蝕歯のう蝕活動性評価を行い,各デバイスの有効性について比較検討した.材料と方法:エナメル質初期う蝕または象牙質う蝕を有するヒト新鮮抜去歯30本を用いた.う蝕表層部の色調や硬さの臨床的な診断基準に従って,急性う蝕,慢性う蝕,初期う蝕の3つのグループに分類した後(n=10),光ファイバー微小pHセンサー,ISFET微小pHセンサー,DIAGNOdent penによるう蝕表層の蛍光反射の測定を行った.各う蝕の測定値はWilcoxon rank sum testを用いて比較した.さらに,各デバイスで得られた測定値の相関性は,Spearmanのローを用いて検定した.すべての分析において有意水準5%にて検定を行った.成績:光ファイバー微小pHセンサーを用いた場合,急性う蝕の表層pH値は5.7±0.3,慢性う蝕は6.2±0.2,初期う蝕は6.2±0.1を,ISFET微小pHセンサーを用いた場合,急性う蝕の表層pH値は5.5±0.3,慢性う蝕は6.1±0.3,初期う蝕は6.2±0.2をおのおの示し,両デバイスにおいて,急性う蝕および慢性う蝕間のpH値に統計学的有意差が認められた(p<0.05).一方,DIAGNOdent penを用いた場合,急性う蝕の測定値は99.0±0.0,慢性う蝕は83.1±19.2,初期う蝕は33.0±20.4であり,慢性と初期う蝕間の測定値に統計学的有意差が認められた(p<0.05).また,すべてのデバイスにおいて,急性と初期う蝕間の測定値に統計学的有意差が認められた(p<0.05).なお,各デバイスで得られた測定値の相関性は,光ファイバー微小pHセンサーとISFET微小pHセンサーとの間に強い正の相関を,DIAGNOdent penと光ファイバー微小pHセンサーとの間,およびDIAGNOdent penとISFET微小pHセンサーとの間に負の相関を認めた(p<0.05).結論:すべてのデバイスで,測定値を指標とした,急性う蝕および初期う蝕間におけるう蝕活動性評価の有効性が示唆された.また,光ファイバー微小pHセンサーとISFET微小pHセンサーとの間で正の強い相関が認められた.

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© 2013 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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