産婦人科の進歩
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原著
卵巣腫瘍手術症例における深部静脈血栓症の術前診断の検討
武居 智信中林 幸士竹村 直也牧原 夏子鈴木 嘉穂陌間 亮一森實 真由美出口 雅士宮原 義也蝦名 康彦吉田 茂樹山田 秀人
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2011 年 63 巻 3 号 p. 271-276

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抄録

卵巣腫瘍症例におけるDVTの術前診断の指針について検討した.2006年1月~2010年6月の間に,当科で術前に血漿D-dimer値を測定した卵巣腫瘍193例(良性115例,境界悪性15例,悪性63例)を対象とした.主治医の判断で術前に下肢静脈ドップラー超音波検査を施行したのは32例(良性9例,境界悪性6例,悪性17例)で,DVTと診断された症例は18例(良性5例,境界悪性2例,悪性11例)であった.DVTの有無と良・悪性別,年齢別,症状の有無,最大腫瘍径,血漿D-dimer値などの項目との関係について解析したところ,DVTと診断された症例の割合は,良性腫瘍に比し悪性腫瘍で有意に高く,下肢の腫脹・浮腫・疼痛・熱感などの症状を有する症例は,症状がない症例に比し有意にDVTと診断された症例が多いことが明らかになった.またDVTの有無と,最大腫瘍径値,BMIの多寡等との間には有意な関連を認めなかったが,血漿D-dimer値が高い症例でDVTと診断されることが多かった.DVTと診断した18例は,すべて血漿D-dimer値が3.0μg/ml以上であったが,一方でDVTに関連した臨床症状のなかった症例が6例あった.本検討により,DVTに関連した臨床症状のある症例や,術前の血漿D-dimer値が少なくとも3.0μg/ml以上の症例であれば,全例術前に下肢静脈ドップラー超音波検査を施行しDVTをスクリーニングすることが重要であると考えられた.〔産婦の進歩63(3):271-276,2011(平成23年8月)〕

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© 2011 近畿産科婦人科学会
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