産婦人科の進歩
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原著
産婦人科臨床における深在性真菌症の管理
福永 次雄本山 覚千々和 真理濱名 伸也出口 雅士丸尾 猛
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ジャーナル 認証あり

2003 年 55 巻 2 号 p. 161-166

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抄録

近年の医療では抗生物質,抗腫瘍剤,免疫抑制剤やカテーテル類の多用による易感染性宿主(compromised host)が増加するなかで,深在性真菌症に対する対応が重要視されてきている.深在性真菌症は患者の死因に直接結びつく場合があるので,その予防,診断,治療と管理は重要である.
 今回,われわれは産婦人科入院患者で有効抗生物質投与にもかかわらず37.0℃以上の発熱を示す109症例について,血中真菌抗原検出法のカンジテック(CAND-TEC)とファンギテック(FUNGI-TEC)を施行し,CAND-TECが(4+)以上,またはFUNGI-TECが11.0 pg/ml 以上の陽性を深在性真菌症発生の指標としてとらえ,本症の病態把握と適正な管理法について検討した.検討項目として,血中真菌抗原陽性群と血中真菌抗原陰性群において,基礎疾患の良・悪性別,カテーテル類使用の有無,白血球数,CRP(C-reactive protein)値を比較検討した.血中真菌抗原陽性群での良性疾患の割合は8.7%と血中真菌抗原陰性群での32.5%に比較して有意に低率であった.血中真菌抗原陽性群では4500/mm3以下の白血球減少が52.1%と血中真菌抗原陰性群での12.5%に比べ有意に高率であった.また血中真菌抗原陽性と判定された時点から1ヵ月以内の死亡について調査したところ,血中真菌抗原陽性群での死亡率は39.1%であり,同時期の血中真菌抗原陰性群での死亡率15.0%に比較して有意に高率であった.さらに当科作成の真菌血症管理指針に基づき行った血中真菌抗原陽性患者に対する治療効果の検討では,有効率は68.0%と従来報告の35~50%に比して改善傾向が認められた.〔産婦の進歩55(2):161-166, 2003(平成15年5月)〕

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© 2003 近畿産科婦人科学会
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