言語研究
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Print ISSN : 0024-3914
特集 焦点および焦点関連の現象をめぐって
語用論から文タイプへ――カラハリ盆地諸言語における非主題S/A項と節2番目の小詞――
Güldemann TomJ. Pratchett LeeWitzlack-Makarevich Alena
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2018 年 154 巻 p. 53-84

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抄録

カラハリ盆地言語帯には,節内の2番目の位置(多くの場合,その節のS/A要素の後)に,ある特別な小詞類が生起するという特徴を共有する言語が存在する。この小詞類に対するこれまでの説明は,平叙文,直接法,強調された主格,主題といったさまざまなラベルを用いてなされており,この小詞類が,多様ではあるが充分に理解されていない一連の機能群を有していることを示している。本稿は,ディスコースに重点を置き,比較の観点から3つの異なる語族の言語,すなわちコエ-クワディ語族の北コエコエ,トゥー語族のヌン,カー語族のジューに見られる関連する事例を探求する。そして,当該の小詞が,非動詞叙述,焦点,entity-central theticity,平叙文,さらにおそらく示唆的S/A標示までにも及びうるほどの多様な領域に広がる構文のネットワーク形成に関わっていると結論づける。この最後の2つの機能(それぞれ文タイプと文法関係に関連するものであって,もはや情報構造上有標である配置を示すものではない)は,thetic小詞構文の過度の使用から出現するものであり,いわゆる「脱語用標識化」の結果である。

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© 日本言語学会, 著者
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