日本家政学会誌
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ニューセラミックス鍋による湿式加熱特性
楠 喜久枝三成 由美橋本 啓一田中 正己
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1991 年 42 巻 1 号 p. 25-29

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抄録

遠赤外線は, 私どもの身近な生活分野でも広く利用されている.しかし, 遠赤外線と調理の関係についての解明は, 十分になされていない.そこで遠赤外線放射率の高いセラミックス素材を用いてニューセラミックス鍋を試作し, アルミ鍋を対照として, 伝導・対流・放射の三つの物性の面から伝熱の比較検討を行った.
実験の結果, このニューセラミックス鍋はアルミ鍋に比べ, 次のことがわかった。まず伝導では, 余熱による保温効果の高いことが認められた.対流ではセラミックス表面からの激しい沸騰による気泡攪乱とそれに伴う対流の速さにより, 被加熱物内部への伝熱促進効果が認められた.放射では, ニューセラミックス鍋は遠赤外線の放射率が高いものの, 放射熱量は無視できる量であった.
以上の結果より, ニューセラミックス鍋は, 湿式加熱において遠赤外線加熱の効果は期待できない.しかし余熱による保温効果と, セラミックス表面からの激しい沸騰気泡による被加熱物内部への伝熱促進効果が期待できるので, 湿式加熱の調理に適性があると思われる.

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