2023 年 64 巻 4 号 p. 245-249
症例は93歳女性。貧血の精査のため当院受診し,末梢血に腫瘍細胞増加を伴ったリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)と診断された。8ヶ月後には貧血が進行し,末梢血腫瘍細胞が66%と増加した。副作用によるQOL低下の懸念から,tirabrutinibを80 mg/日の低用量で開始した。治療開始3週間後には輸血依存から離脱し,末梢血腫瘍細胞も減少した。その後,tirabrutinibに対して忍容性がみられたため240 mg/日まで漸増した。治療開始13ヶ月後の現在,副作用なく経過し部分寛解を得ている。Tirabrutinibはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)に高い選択性を有するBTK阻害薬でLPL症例に対し高い有効性を示すが,高頻度に皮膚障害が報告されておりQOL低下が危惧される。高齢者に対しては,副作用を考慮した低用量tirabrutinibの導入も有効である可能性があり報告する。