臨床血液
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47 (EL-47)
移植後の呼吸器ウイルス感染
瀬尾 幸子
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2021 年 62 巻 8 号 p. 1288-1295

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抄録

呼吸器ウイルス感染症は,健常者でも起こる身近な感染症であり,造血幹細胞移植後は,100日以内に約40%の患者に起こる頻度の高い移植後合併症である。呼吸器ウイルスは新種のウイルスが次々と報告されており,この20年間に新型コロナウイルス,ヒトメタニューモウイルス,ボカウイルスが同定された。2019年にはSARS-CoV-2が同定され,COVID-19として世界的大流行を見せている。造血幹細胞移植患者において,SARS-CoV-2を含めたコロナウイルスおよびヒトメタニューモウイルス肺炎の30日生存率は60~70%であり,インフルエンザやRSウイルス肺炎と同等である。一方,ボカウイルスは肺炎の原因ウイルスであるか否か未だ明らかではない。今後,COVID-19の経験を生かして,造血幹細胞移植患者における呼吸器ウイルス感染症対策およびその治療法確立を目指していく必要があるであろう。

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© 2021 一般社団法人 日本血液学会
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