臨床血液
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特集:免疫細胞療法の現状と今後の展望
難治性ウイルス感染症に対する細胞療法
森尾 友宏藤田 由利子高橋 聡
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2018 年 59 巻 2 号 p. 205-215

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抄録

様々な抗ウイルス薬が開発される中,より安全,効果的,かつ持続性のある根治的治療法としてウイルス特異的T細胞に注目が集まっている。特異的T細胞は直接分離することも可能であり,また抗原刺激とT細胞の増幅のみの手順でも純度が高く,十分な数を得られることができる。刺激には抗原(ウイルス,タンパク,ペプチド)と抗原提示細胞が必要であるが,抗原提示においては抗原提示細胞へのプラスミド導入,オーバーラッピングペプチドの使用など様々な工夫が行われている。対象となる疾患の主体は造血細胞移植後の難治性ウイルス感染症であるが,多くの研究で,GVHDなどの副作用は極めて少なく,有効性も高いことが示されている。HLA部分合致第三者からの細胞調製も模索されている。ヘルペス属ウイルス,ポリオーマウイルスなどを中心に研究が進んでいるが,今後その他のウイルスに,さらに細胞内寄生菌,真菌などにも適応が広がり,また様々な免疫抑制状態における感染症にも応用されていく可能性がある。

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© 2018 一般社団法人 日本血液学会
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