2017 年 58 巻 5 号 p. 499-505
近年,解析手法の発達により,腸内細菌が詳細に検討されるようになり,その異常(dysbiosis)は様々な疾患・病態と関わっていることが明らかとなってきた。移植領域においても,腸内細菌叢は移殖片対宿主病(GVHD)の発症,移植成績に深く関わっていることが報告されるようになっている。このことは,腸内細菌叢への介入が治療手段となりうることを示唆しており,当院ではステロイドによる1次治療に反応の乏しい腸管急性GVHD対して,便微生物叢移殖(FMT)の安全性を評価するパイロット研究を実施した。FMTに明らかに関連する副作用は軽度かつ一過性であった。3例で完全寛解となり,再燃した1例でも一時的な改善を認め,治療法としても期待できる結果であった。FMTは有望な治療となりうる一方で,感染などのリスク,慎重なドナースクリーニング,最適なプロトコールの決定など,解決すべき問題もあり,有効性も含め今後さらなる検証が必要である。