2011 年 20 巻 5 号 p. 787-791
解剖学的困難症例の超高齢腹部大動脈瘤に対してendovascular aneurysm repair(EVAR)を施行し,良好な結果を得たので報告する.症例は92歳女性で2003年に径30 mm大の腹部大動脈瘤を指摘されていたが2009年に最大短径55 mmと増大した.既往に胃癌に対する幽門温存胃切除およびその後の腹壁瘢痕ヘルニアがある.高度閉塞性呼吸障害および高血圧を認めた.瘤のproximal neckは13 mmと短く,腹部大動脈終末径は15 mmと狭小で,アクセスルートの石灰化は著明であった.解剖学的にはEVAR困難症例であったが,open surgeryのリスクも高く2009年7月Zenith® AAA endovascular graftを使用しEVAR施行となった.術後CTで中枢側type 1エンドリークおよび左脚狭小化・右脚接合部拡張不良を認めたため,局所麻酔下にproximal neckおよび接合部・狭小部の再圧着を行った.脚狭窄の改善および中枢エンドリークの消失を確認し,翌日に退院した.術後1年経過し合併症なく瘤径は41 mmと縮小を認めた.EVARの限界と患者のリスクの両者を考慮するうえで示唆に富む症例であった.