人工臓器
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ハイブリッド型人工肺モデルの酸素移動速度
井上 剛臣高木 睦澤 芳樹白倉 良太吉田 敏臣
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1996 年 25 巻 4 号 p. 811-815

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抄録

微多孔性中空糸膜に細胞を接着したハイブリッド型人工肺において, 細胞接着の酸素移動速度に与える影響を調べた. 親水化中空糸膜にDEA基を導入して陽性荷電することにより細胞接着密度は増加し, コラーゲンコート中空糸とほぼ同じとなった. また, 中空糸膜に接着した細胞は, ディッシュ底面に接着した細胞と同程度の比速度で増殖した. 細胞を接着しない陽性荷電中空糸膜モジュールにおいて, ガス流速の増加に伴って酸素移動速度が増加したが, これは膜を介した液漏れの減少によると考えられた. Wilson's plotにより酸素の膜透過係数kMは1.0×10-2cm/minと決定されたが, これは通常の人工肺よりは低かった. 一方, 中空糸膜モジュールに細胞を接着することによって膜透過係数は2.98×10-2cm/minに増加したが, 細胞の接着によって灌流液漏出が防止され気側の偏流が回避された結果と考えられた. また, シャーウッド数, シュミット数など無次元項を用いた解析により, 液側境膜物質移動係数は細胞接着によって影響されないことが確認された. 細胞を接着した微多孔性中空糸膜は, 従来の人工肺で課題となっている血漿漏出の防止とガス交換能の維持の両立を達成し得る優れた複合膜として期待される.

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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