日本エイズ学会誌
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HIV・HCV重複感染の治療経過中, 急速に致死的肝不全を来した血友病Aの1例
曽我部 進橋野 聡小野澤 真弘守田 玲菜太宰 昌佳夏井坂 光輝小野 雄司泉山 康中馬 誠近藤 健髭 修平大野 稔子渡部 恵子石津 明洋浅香 正博
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2005 年 7 巻 1 号 p. 37-42

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抄録

目的: 本邦では血液製剤由来のHIV患者のほとんどがHCVにも重複感染しているが, HAARTと抗HCV薬のリバビリン併用にて時に重篤な乳酸アシドーシス (LA) が生じることがある. 今回, HAART施行中にリバビリンを併用した経過中にLAを契機に致死的肝不全を来した1例を経験したので, 本症例の剖検所見に文献的考察を加えて報告する.
症例: 症例は35歳男性. 血友病Aに対し使用した血液製剤でHIV・HCVに感染した. 1990年より抗HIV療法を開始し, 薬剤変更を経て2003年1月よりd4T+ddI+PI (RTV+LPV) で治療していた. 同年9月よりHCVに対しIFNα+リバビリンにて加療開始したが, 10月にLAを発症した. 投薬中止しメイロン投与等対症療法を施行したが, 肝不全が進行し, 11月に永眠された.
結論: 本症例ではLA発症を契機に急速な致死的肝不全を来したわけであるが, その原因としては,(1) LAそれ自体,(2) IFN・リバビリン併用療法の副作用,(3) HCVによる代償性肝硬変から非代償性肝硬変への急速な進展, の3点が考えられた.

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