2012 年 47 巻 3 号 p. 631-636
近年、建築物の絶対高さ制限を導入した高度地区を指定する自治体が増加している。ただ新たに強化される高さ規制のもとで容積率を確保するため、水平方向に長大な建築物が建てられ、景観上影響がでてくることが懸念される。本研究では、絶対高さ制限を付加した新たな高度地区規制の導入が予定されている神戸市事例において、シミュレーション画像をもとに、景観に与える影響を評価し、景観改善手法の有効性を考察することを目的としている。そこで同市の大規模建築物届出制度のデータを用い、現行高度地区のもとで建設された建築物が改正後どれほど高さ規制に抵触するかを量的に把握し、形態変化と景観上の改善手法のシミュレーション画像による景観評価実験を行った。その結果、高度地区改正により大規模建築物の形態は、間口幅や奥行きの増加と敷地境界への壁面の接近が生じ、景観に影響を与える可能性があり、現況の高層の状態と比較して、高さを抑え間口や奥行きを増加させた形態が必ずしも評価がよくなるとはいえないこと。間口幅、水平幅が増加するに伴い開放性が低下する傾向があること。建築物の壁面の分節化が景観のデザイン性に大きく影響することが明らかになった。