農村はそれぞれの地域が長い歴史の積み重ねを経て、今の姿に至っている。そこには先人たちの日常生活に対する知恵やその複雑な仕組みなどが蓄積されている。現在それらが徐々に消滅しつつある状況の中で、奥深い農村文化を紹介・継承する方法が求められている。その方法としてモデルを用いた表現方法が考えられる。モデルは本物を保護しながら広く伝えることができ、また、抽象的で空想的なイメージを付け加え、幅広い人に興味を持ってもらうことができるなど有効である。しかし、同時に事実を歪めるといった危険性も併せ持っている。そこで、モデルを利用して農村文化を表現しているものの中で、現在大きな反響を呼んでいるといえるテレビ番組の企画の農村モデル Aを事例として取り上げ、立地地域の住民と制作者の農村モデル Aに対する意識の違いを明らかにし、最後に今後の農村文化の情報発信におけるモデルの利用のよりよいあり方と可能性について考察を行なう。