近年、自動車の普及に伴う市街地の郊外化により、様々な都市問題が顕在化し、その対策として、都市機能の集約による都市の効率化、いわゆるコンパクトシティの実現に向けた施策が多くの自治体で検討されている。しかしその一方で、それを実現するためのコンパクトシティ施策の効果・影響については十分な分析や検証が行われているとはいえないのが現状である。 そこで、本研究ではコンパクトシティ施策の効果を定量的に明らかにすることを目的として、地方都市を対象とした都市構造モデルを構築し、福井市を対象とした数値シミュレーションにより、コンパクトシティ施策を単独、あるいはパッケージとして実施した場合に、都市構造や交通環境負荷に及ぼす影響を明らかにした。また、郊外への大型店舗立地が無い場合・有る場合について施策の効果を計測し、施策実施前の都市構造により、施策の効果に大きな差が見られることを示した。さらに、施策パッケージの実施による鉄道事業者の収益改善効果を計測し、コンパクトシティ施策の実施は、コンパクトな都市構造をもたらすだけでなく、公共交通事業者の収益改善をももたらす可能性があることを示した。