環境科学会誌
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一般論文
異なる渓畔帯幅を持つ集水域から流出する2つの渓流における,pHの時空間変動に及ぼす二酸化炭素分圧とその他の要因による影響
仲川 泰則柴田 英昭佐藤 冬樹笹 賀一郎
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2009 年 22 巻 3 号 p. 173-186

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抄録

著者らは,北海道の2つの集水域について,渓流水のpHの時空間変動と,その変動を引き起こす要因について評価した。1つの集水域は,渓流の流路沿いに湿地が広がり,もう1つは狭い渓畔域を持つ。著者らは,渓畔湿地が渓流水のpHに及ぼす影響についても評価した。本研究では,渓流水のpHはほぼ中性で,主に二酸化炭素分圧(以下,pCO2)によりコントロールされていた。つまり,渓流水・渓畔帯からのCO2の脱気により,高いpCO2と低いpHを示す湧水から低いpCO2と高いpHを示す下流の水に徐々に変化していった。流路周辺の地下水は,渓流水よりも高いpCO2と低いpHを示した。地下水の流入により渓流水量が増加するが,渓流水のpHには明瞭な影響を示さなかった。このことは,土壌と渓流の境界面で比較的速やかなCO2の脱気が起こることを示唆する。広い渓畔湿地を持つ集水域は,高いpCO2と低いpHを示す小さな支流を有し,この支流が直接的に渓流水を酸性化した。融雪期にこの支流の流量が高くなったとき,高いpCO2を持つ支流が多量に流入するために,流下に伴う渓流水のpH上昇傾向が一時的に逆転した。

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© 2009 社団法人 環境科学会
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