大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
研究論文(技術調査報告)
オープントップチャンバー法を用いたハツカダイコンの生長に対するオゾンの影響を指標とした長崎の大気環境評価
中島 健太郎西 祐理子川田 彩香山口 真弘
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 53 巻 5 号 p. 186-193

詳細
抄録

オゾンなどによる越境大気汚染が顕著な長崎において、オゾンへの感受性が高いとされるハツカダイコンの生長を指標とし、オープントップチャンバー (OTC) 法を用いてオゾンの植物影響に着目した大気環境評価実験を行った。長崎大学構内(長崎県長崎市)にOTCを設置し、オゾン除去空気区と野外空気区(大気中のオゾンを除去しない区)の2処理区を設けた。1.4 Lポットで生育したハツカダイコンの本葉展開開始時に処理を開始し、1週間後にサンプリングを行って葉と葉柄(地上部)および下胚軸と根(地下部)の乾重量を測定した。この大気環境評価実験を2015年3月から10月にかけて計9回行った。いずれの実験においても地上部乾重量にオゾンの有意な影響は認められなかったが、5月中旬、9月および10月に実施した実験において、オゾンによる地下部乾重量の有意な低下が認められた。そこで、地下部乾重量のオゾンによる変化率と平均オゾン濃度との関係を調べたが、有意な相関は認められなかった。一方、単位オゾン濃度あたりの地下部乾重量の変化率と各実験期間中の平均気温および平均相対湿度との間に有意な負の相関が認められ(p<0.05およびp<0.033)、気温や相対湿度が高いとハツカダイコンに対するオゾンの悪影響が発現しやすいことが示された。以上の結果から、越境大気汚染が顕著な長崎で観測されるオゾンは、気象条件次第では、ハツカダイコンのようなオゾン感受性の高い植物に悪影響を及ぼすことが明らかになった。

著者関連情報
© 2018 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top