大気環境学会誌
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原著
九州北部の離島および大都市部におけるPM2.5濃度の通年での挙動
兼保 直樹高見 昭憲佐藤 圭畠山 史郎林 政彦原 圭一郎河本 和明山本 重一
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2011 年 46 巻 2 号 p. 111-118

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抄録

わが国のPM2.5汚染状況にアジア大陸起源の汚染物質が与える影響を明らかにするため、五島列島福江島(人口4万人)と、その北東約190 kmに位置する福岡市(人口144万人)、および福江島の東約100 kmにある長崎市(人口40万人)における2009年度のPM2.5濃度を比較した。春季にみられた福江島・福岡での1時間値の挙動の類似は、夏季、秋期、冬季にも同様にみられ、長崎でも測定が始まった10月からの測定値は福江島・福岡とほぼ一致した変動を示した。これらの変動は、主として寒冷前線後面型、あるいは移動性高気圧周辺流型といった総観規模気象に駆動された長距離輸送により生じていた。夏季には、時折通過する低気圧による輸送による濃度上昇の他、梅雨前線の北側に入った際に濃度上昇が顕著にみられた。また、秋季に4~5日間にわたって高濃度が続いたイベントでは、長距離輸送によるPM2.5の流入の後、移動性高気圧下の静穏状態によって維持されていた。黒色炭素粒子濃度は、月平均でみると福岡において福江島よりも濃度が高い月が多く、都市大気汚染による付加分を認めることができるが、その値は最大で1.2 μg m-3程度であった。2009年度の観測結果では、福岡などの九州北部地域におけるPM2.5の濃度および時間変動は、長距離輸送された広域的な汚染に年間を通して事実上支配されており、国内の都市毎で発生した汚染は、PM2.5濃度としてはきわめてわずかにしか寄与しいていない可能性が示された。

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© 2011 社団法人 大気環境学会
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