心臓
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第40回理論心電図研究会 QT延長症候群とBrugada症候群の性差
清水 渉里見 和浩栗田 隆志鎌倉 史郎小久保 喜弘友池 仁暢
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2006 年 38 巻 5 号 p. 549-553

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抄録

近年,いくつかの遺伝性不整脈疾患がイオンチャネルや細胞膜蛋白の機能をつかさどる遺伝子の異常により発症するイオンチャネル病であることが判明した.一方,性ホルモンはK+電流をはじめとする種々のイオン電流を修飾するため,イオンチャネル病における性差に重要な役割を果たす.先天性QT延長症候群(LQTS),特にLQT1では,初回心事故の発生年齢は女性に比べて男性で若く男性では思春期(15歳)以降の初回心事故発生率は急速に減少するのに対して,女性では40歳前後まで初回心事故発生率は増え続ける,思春期前の心事故発生頻度の違いには,男女の活動性の違いが関与すると考えられるが,思春期以降の性差には,男性ホルモンであるテストステロンが重要な役割を果たすと考えられる.Brugada症候群は,これまで報告されているNa+チャネル遺伝子のSCN5Aにおける変異はすべて常染色体優性遺伝形式をとるにもかかわらず,圧倒的に男性に頻度が多い.これには,動物実験により,右室心外膜細胞の一過性外向き電流(I10)密度が,女性に比べて男性で高いことが関与することが示唆されている.一方で,男性ホルモンであるテストステロンは,外向きのK+電流を増強し,内向きのCa2+電流を減少することにより,Brugada症候群を発症しやすくする方向に作用し,Brugada症候群における性差に関与すると考えられる.

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