芝草研究
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芝草病原菌の rDNA ITS 領域を利用した分子診断マーカーの構築*1
山家 愛祈三堀 友子土田 智美新宮 良宜有江 力米山 勝美
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2006 年 35 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

芝草病害の診断をより簡便に行うために, 病原菌ゲノムDNAのrDNAにおけるintemal transcribed spacer (ITS) 領域の多型に基づくDNAマーカーを用いた簡易同定法の開発を行った。芝草病害としては葉腐病 (ラージパッチおよびブラウンパッチ) , 葉枯病, ダラースポット病, 赤焼病, ピシウム病, 擬似葉腐病, 炭疽病, 立枯病の発生が大きな問題となっている。そこで, これら病害の病原菌のrDNAにおけるITS領域の違いに着目して特異的なPCR用プライマーの構築を試みた。カーブラリア葉枯病のCurvularia sp.難胞子形成菌に対するプライマーCD1-CD2, ダラースポット病菌Sclerotinia homoeocarpaのプライマーDr1-Dr2およびDrL1-DrL2, 葉腐病菌Rhizoctonia solani AG2-2菌およびR.solani AG-1に対するプライマーとして各々RSY1-RSY2とR1S1-R1S2, 疑似葉腐病菌binucleate Rhizoctonia AG-DのプライマーAGD1-AGD2, 赤焼病菌Pythium aphanidermatumのプライマーPas1-Pas2, ピシウム属菌を広く検出できるプライマーPAV1-PAV2, 炭疽病菌Colletotrichum graminicolaのプライマーCg1-Cg2, 立枯病菌Gaeumannomyces graminis var. triticiに対するプライマーGTA1-GTA2を構築した。これらのプライマーを用いて, 病原菌ゲノムDNAを鋳型としてPCRを行ったところ, 各病原菌に対して特異的なDNA増幅断片長が確認、された。さらに, 各病原菌の増幅DNA断片長に相違を生じるようにプライマーセットを構築することで, 一度のPCRで4種類の病原菌を同時に特定することに成功した。この簡易同定法は罹病葉における微量な病原菌の存在も確認できるため, 発生初期の病害診断技術として応用可能であると考えられる。

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