1989 年 43 巻 5 号 p. 555-560
シクロスポリンは強力な免疫抑制作用を有するため, 副作用の面においても血中モニタリングは極めて重要である. 我々はシクロスポリンを用いた15例の腎移植について血中濃度を指標に定法, 薬物体内動態解析などの検討を行つた. 測定法は精度に優れるHPLC法を用い, RIA法には若干ばらつきがみられた. ほとんどの症例にミゾリビンを併用しシクロスポリン投与量を抑えることにより副作用発現率を低くし, その際にシクロスポリンtrough濃度が30ng/ml以下でコントロールされる症例が半数以上あつた. また, 経口投与において吸収率を一定と考えたときのクリアランスと腎移植後経過期間に投与量を反映する見解を得た. 今後吸収率の誤差を配慮し個々の長期にわたるデータの集積が重要な課題であり, それに伴い腎肝機能との関係, 移植後の経日的な変化ならびにAUCの個体差などさまざまなパラメーターを蓄積することにより投与量設定を可能ならしめるとおもわれる.