有病者歯科医療
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北海道大学歯学部附属病院外来における院内救急症例の検討
亀倉 更人舩津 暁子詫間 滋黒住 章弘木村 幸文飯田 彰藤沢 俊明福島 和昭
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2004 年 13 巻 2 号 p. 65-72

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抄録

1998年1月から2003年9月までの過去5年9か月間に北海道大学歯学部附属病院 (現北海道大学病院歯科診療センター) 外来において, 各診療科から歯科麻酔科へ救急応援依頼のあった症例について検討を行った.
歯科麻酔科に救急応援依頼があった症例は22例で, 当院外来総患者数の0.003%であった. 偶発症発生の場所は, 5例が治療前の待合室と医学部附属病院から移動中の廊下, 16例が診療室内, 1例が治療終了後の病院玄関であった. 診療室内での偶発症では, 局所麻酔施行例は11例, 局所麻酔非施行例は5例であった. 偶発症の原因の内訳は, 血管迷走神経反射が8例, てんかん発作4例, 狭心症発作3例などであった. なお, 22例中, 17例に何らかの基礎疾患が認められた. 当科応援到着前に血圧測定など何らかの対応がされていた症例は12例で, 10例は何もなされていなかった. 応援依頼に対し当科が行った処置は, 薬剤を投与した症例が9例, 静脈確保あるいは酸素投与のみの8例, 経過観察のみの症例が3例, 異物除去を試みた症例が2例であった. 全例症状は軽快した.
今回の検討から, 待合室や玄関などの診察室以外で発生した偶発症でも当科に応援が依頼されていることがわかった. そのため常に患者の全身状態の把握につとめることはもちろんであるが, 医療スタッフをはじめ病院の全職員が, 患者の状況に気を配ることが重要と考えられた. また, 局所麻酔が不必要な比較的侵襲の少ないと考えられる治療時にも偶発症は発生しており, 治療内容にかかわらず, 偶発症発生に対する対応を整えておくことが重要と考えられた. 偶発症発生の際, 当科応援到着までに何も処置がなされていない場合が多かった. 偶発症の発生場所がどこであろうと, 最低でもバイタルサインの確認が行える体制を作る必要があると考えられた. さらに, 歯科治療に対する不安感緊張感, ストレスが偶発症発生の背景となっている症例が多いため, 鎮静法のより一層の活用が必要と考えられた.

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