脳と発達
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症例報告
一過性に右前頭・側頭部の血流低下および遂行機能障害を認めた急性脳症の1例
佐野 史和金村 英秋反頭 智子杉田 完爾相原 正男
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2016 年 48 巻 4 号 p. 282-286

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抄録

 脳血流single photon emission computed tomography (以下SPECT) は急性脳症において急性期の異常所見の検出感度が高いことなどから, 近年注目される検査の一つとなってきている. 今回我々はSPECTで一過性に右前頭・側頭部の血流低下を認め, 同時期に新規作業の学習困難を含む遂行機能障害を呈した急性脳症の1例を経験した.
 症例は5歳の男児で, 遷延する意識障害で発症し, 第2病日の覚醒時脳波で全般性高振幅徐波を認め急性脳症と診断した. 第3病日の頭部単純MRIでは明らかな異常は認めなかったが, SPECTで右前頭・側頭部の血流低下を認めた. 第20病日のKaufman assessment battery for children (以下K-ABC) において継次処理尺度の標準得点が低値であり, 新規作業の学習困難を含む遂行機能障害が認められた. 発症8カ月後に行ったSPECTで同部位の血流低下は改善し, 発症12カ月後に行ったK-ABCでは継次処理尺度も改善を認めた.
 急性脳症発症早期にMRIで異常が指摘されない場合でも, SPECTで血流の異常を検出できる可能性がある. また, 神経心理学検査とSPECTを併用することで, 高次脳機能障害のより正確な客観的評価を施行し得た. SPECTは小児急性脳症の補助的診断と高次脳機能障害を含む後遺症の診断や病態の理解に有用と考えられる.

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© 2016 一般社団法人日本小児神経学会
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