日本化学療法学会雑誌
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深在性真菌症に対するvoriconazoleの臨床試験
多施設共同, 非対照試験
二木 芳人他
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2005 年 53 巻 Supplement2 号 p. 32-50

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抄録

深在性真菌症に対するvoriconazole (VRCZ) の臨床的有用性 (有効性および安全性) を検討するため, 多施設共同, 非対照試験を実施した。
VRCZを投与した100例のうち有効性評価対象例数 (Per Protocol Set: PPS) は65例であり, 安全性評価対象例数は100例であった。VRCZは, 経口療法では負荷投与として1日目に300mgを2回, 2日目から維持投与として150~200mgを1日2回投与した。静注療法では負荷投与として投与1日目に6mg/kgを2回, 2日目から維持投与として重篤な真菌症の場合は4mg/kgを1日2回, それ以外は3mg/kgを1日2回投与した。なお, 経口および静注療法とも3日目の血漿中濃度が2.5μg/mLを超える場合, 5~7日目に投与量を調整し, 加えて, 8日目の血漿中濃度が4.5μg/mLを超える場合, 頻回に肝機能検査を実施し, 必要に応じて投与量を調節した。また, 静注療法を少なくとも3日間行った場合には, 静注療法から経口療法への切り替え (スイッチ療法) が可能であるとした。治療期間は, 最長12週間とした。
その結果, VRCZの総合効果の有効率は, アスペルギルス症68.3%(28/41), カンジダ症91.7%(11/12), クリブトコックス症100%(8/8) であった。また, 一次治療の有効率は91.2%(31/34), 救済治療の有効率は61.3%(19/31) であった。
原因真菌別真菌消失率は, アスペルギルス属全体で69.2%(9/13), カンジダ属全体で91.7%(11/12) であった。
治験薬との因果関係を否定できない有害事象は100例中78例 (78.0%) に認められた。主な事象は差明 (25.0%), 視覚異常 (24.0%), 嘔吐 (8.0%), 肝機能異常 (8.0%), 頭痛 (8.0%) およびγ-GTP増加 (7.0%) であった。高頻度にみられた視覚に関する有害事象は一過性でかつ可逆性であった。また, 有害事象の重症度は, ほとんどが軽度または中等度であった。
血漿中VRCZ濃度と有効性または安全性との間には明確な関連性は認められなかった。
以上より, 本薬は重症または難治性の深在性真菌症の治療に有用であることが示唆された。

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