生体医工学
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無電化地域における唾液からのウィルス遺伝子検出を可能とする新手法「NEC-SD-LAMP」の開発
木村 雄亮池内 真志
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2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 568

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抄録

ウィルス感染は、迅速な診断が完治や感染拡大の防止に重要である。ウィルス感染は、唾液中のウィルス特異的な遺伝子解析により、正確かつ早期に発見できる。しかし従来装置は電気的制御が必須であり、特に発展途上国は無電化地域が多く、使用できない。本研究では電気的制御を一切用いず、唾液からウィルス遺伝子を検出可能な新手法「Non Electrical Control-SalivaDirect-LAMP (NEC-SD-LAMP)」を開発した。本手法は、装置に水を添加するだけで、唾液からのウィルス遺伝子精製から検出までの全反応を実施できる。添加した水は、装置内の発熱剤と反応する事で、装置内を約95℃に加熱する。本反応によりSalivaDirect法による唾液からのウィルス遺伝子精製が実行される。この時、装置内パルミチン酸の融解が同時に行われる。融解したパルミチン酸が液体から固体へ転移する間、装置温度はパルミチン酸融点の63℃に維持される。これによりLAMP法の反応実施に必要な温度での一定期間の加熱が可能となり、ウィルス遺伝子の特異的な増幅、及び解析を行える。感染の有無は、溶液色の変化で簡単に判別でき、結果確認を含め、非電化環境で実施できる。開発装置を用い、唾液内アデノウィルス遺伝子の検出に成功した。この際の限界検出濃度は2 copies/ulであった。これは新型コロナウィルスの未発症段階検出も可能な値であり、無電化地域だけでなく、様々な医療現場への応用が期待できる。

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© 2021 社団法人日本生体医工学会
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