日本公衆衛生雑誌
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原著
脂質関連栄養素の適正摂取を目標とした地域住民に対する個別栄養教育の介入効果
天野 信子尾方 希森田 徳子佐伯 圭吾野谷 昌子小向井 英記東 裕子松田 亮三車谷 典男
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2002 年 49 巻 4 号 p. 332-343

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抄録

目的 地域住民を対象に個別健康教育が多く行われつつあるが,その介入効果に関する研究は意外と少ない。本研究は,脂質関連栄養素の適正摂取を目標とした個別栄養教育が栄養素摂取量に与える介入効果を検討することを目的としたものである。
方法 奈良県 A 町の40歳以上の住民を対象に実施された基本健康診査の受診者の中から40歳以上65歳未満の女性のうち,血清総コレステロールが220 mg/dl 以上300 mg/dl 未満で,本研究に対するインフォームド・コンセントを提出し,ベースライン健診を受けた79人を対象とした。対象者を前期介入群42人と後期介入群37人に分け,前期介入群には前半の24週間は介入を加え,後半の24週間は自己管理期間として介入せず,後期介入群は前半24週を待機期間として介入せず,後半24週間に介入を加えた。介入内容は,ほぼ 8 週間おき計 3 回の栄養士による個別食事指導と,一定期間ごとに求めた日記帳形式の「三日間の食事記録」,「ヘルシーライフ手帳」の自己記録等である。各種栄養素摂取量の推定は上島・岡山が開発した食物摂取頻度調査票を用い,摂取エネルギー量で調整した栄養素摂取量の介入期間前後の変化を効果判定の指標とした。
成績 前期介入群42人のうち 3 人が介入期間中に,さらに 2 人が自己管理期間中に脱落し,後期介入群37人については 6 人が待機期間中に,さらに 3 人が介入期間中に脱落した。前期に介入を受けた39人と後期に介入を受けた28人を加えた介入期間群67人の摂取エネルギー量調整摂取量は,介入を受けなかった待機期間群31人の結果と異なり,脂質に加えコレステロール・飽和脂肪酸が有意に低下するとともに,PS 比が有意に上昇していた。また,前期に介入を受け後期は自己管理となった37人の主たる脂質関連栄養素摂取量は,自己管理期間中には変化なく,48週全体を通した時,ベースライン時よりも有意な低下が示された。また,脂質関連栄養素の望ましいと思われる摂取パターン,すなわち脂肪エネルギー比率25%以下かつコレステロール摂取量300 mg 以下かつ PS 比 1 以上の者の割合は,介入期間群が待機期間群に比べ24週間で有意に増加していることも示された。
結論 以上の結果は,個別栄養教育が脂質関連栄養素摂取量を有意に低下させること,その効果は介入終了後24週間は持続することを示唆するものである。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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