2010 年 31 巻 1 号 p. 31-35
腹腔鏡手術は低侵襲で整容的に優れるため,腹部救急疾患に対しても適応が拡大しつつある。当科では最近12年間に,急性虫垂炎・肥厚性幽門狭窄症を除く小児腹部救急疾患75例に対し腹腔鏡手術を行った。診断は腸閉塞17例,脳室腹腔シャント障害9例,卵巣・卵管捻転8例,Meckel憩室(腸閉塞を除く),横隔膜ヘルニア各7例等であった。診断確定目的の腹腔鏡を21例に行い6例は観察のみで終了した。新生児例は捻転のない腸回転異常症と卵巣嚢腫捻転の計3例であった。術中小腸損傷は2例(2.5%),開腹移行は4例(5.0%)あった。腹部救急疾患に対して腹腔鏡手術を行うには,迅速な開腹移行にも対応できる,チームとしての熟練が必要である。腹腔鏡手術の絶対的禁忌は全身麻酔・気腹のハイリスク例であり,相対的禁忌として腸管壊死を伴う絞扼性イレウスがあげられるが,その他の症例では腹腔鏡手術の適応を考慮できると考えられた。