近年,オンラインショッピングサイトでは,利益向上のために様々なビジネス施策が行われている.クーポンの発行やポイントの還元などがこれらのビジネス施策に該当し,管理者はクーポンの割引額やポイントの還元額を設定してビジネス施策を行う.このとき,クーポンの割引額などの施策内容は利益に大きな影響を与えるため,利益最大化のためにこれらのビジネス施策を最適化することが重要な課題となっている.これらの課題に対する方法の1つに,入力をビジネス施策,出力をアウトカム変数とした関数を推定し,最適な入力を探索する機械学習のアプローチが存在する.しかし,このような関数は一般的に未知である上に,初めて施策を打つ場合には関数を推定するための学習データが存在しない.そこで,逐次的に学習データを追加しつつ,入力の逐次最適化を行う手法が近年注目されている.このような入力の逐次最適化手法の1つにベイズ最適化が挙げられる.ベイズ最適化では,学習データから出力の事後分布を推定し,獲得関数と呼ばれる評価指標に基づき,入力の最適化に寄与すると考えられる次のデータ点を推定することができる.しかし,通常のベイズ最適化を実務の業務に適用した場合,入力によって分散が異なるなどのデータの特性を考慮していないため,必ずしも適切な結果が得られない.そこで,本研究ではビジネス施策に対応した関数推定法であるHeteroskedastic Gaussian Process (hetGP) に対して,これらのビジネス施策特有の状況を考慮可能な獲得関数を提案する.はじめに,出力の誤差分散を考慮するためにhetGPを用いて関数の推定を行う.その後,データ数に依存する誤差分散の推定精度を考慮するために,hetGPで推定された分散に対して各入力ごとのデータ数による重みを掛け合わせる. 最後に,各入力を選択した際の取得データ数を考慮するために,次のステップで各入力のデータが追加された場合の分散の更新率を獲得関数に組み込む. 本研究では,人工データを用いて提案手法がビジネス施策最適化において有効な探索を行うことができることを示し,これまでベイズ最適化では扱われていなかった入力に依存する誤差分散を持つ関数データに対しても効率的な探索を行うことで,ビジネス施策の規則的な最適化を可能とした.