2018 年 33 巻 1 号 p. 94-113
職業評定は,安定していることが知られているが,不変というわけではない.本稿では,ある職業に就いている「家族・親戚・友人・知人」がいることによって,職業評定が変化するかどうか,すなわち,社会関係資本が職業評定に与える効果について検討した.この職業評定の変化には,いくつかの異なるメカニズムが考えられる.1つは,身近に当該職業の人がいて,その人からサポートを受け,その見返りとして評価を高める場合である.これを「サポート効果」と呼ぶ.もう1つは,自分の職業を高く評価しようとする作用から,自分とつながりのある他者が同種の職業を持つ場合に,他者の職業を自動的に高く評価することになってしまう場合である.これを「自己高揚効果」と呼ぶ.さらには,当該職業に関する内容や待遇をよく知ることによって評価を高める場合もある.これを「知識効果」と呼ぶ.このような諸効果のいずれによって,職業評定が変化するのかを探索的に検討した.主な結果は,次のとおりである.ある職業に就いている「家族・親戚・友人・知人」がいることで,評価が高まる職業は少数であり,その高まりが「サポート効果」によるものは,その半数程度であった.「家族・親戚・友人・知人」がいることによって評価が不変であるものについても,その一部に「サポート効果」がみられた.